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一般社団法人Reaching Zero-Dose Childrenは、フィリピン・パンパンガ州およびAngeles City周辺において、ワクチン接種に関する現地調査を実施しました。Week 1からWeek 3にかけて、Masantol、Macabebe、Sapangbatoの3地域を訪問し、地域住民、保護者、Community Health Workers(CHWs)、Barangay(最小行政単位)関係者、現地医学生の協力を得ながら、家庭訪問による量的調査、インタビューを進めました。

本調査では、接種を遅らせる因子について、地域ごとの生活環境、地理的アクセス、情報の伝わり方、保健医療サービスへの信頼など、多面的な観点から理解することを目指しました。

Week 1:Masantolでの調査開始

Week 1は、Masantol での調査から始まりました。データコレクション開始にあたり、まず市長へご挨拶に伺い、私たちの団体の活動と調査の目的について説明しました。

市長は私たちの活動の意義を高く評価し温かく応援してくださり、現在掲げられているワクチン接種率95%という目標を達成するためにも、未接種の人々がなぜワクチンを受けられていないのかを丁寧に聞き取り、地域に共有してほしいとのお話をいただきました。その後、副市長ともお話しする機会をいただき、激励のお言葉をいただいた後、コミュニティへ戻りました。

当時は台風が近づいており、雨が続いていたため、しばらくBarangayのオフィスに滞在し、地域のヘルスワーカーの方々と話をしました。CHWsは、日々の活動の中で感じている地域住民のワクチンに対する考え方や、ワクチン接種を進める上での課題について共有してくださいました。

午後からはいよいよデータコレクションを開始し、初日は9軒の家庭を訪問しました。訪問先の方々はいずれも快く調査に協力していただくことができ、夜には別のBarangay Captainのもとを訪問し、翌日以降のデータコレクションについて快諾いただきました。

2日目以降も、現地医学生の協力を受けて複数のBarangayにおいて順調に量的調査を進め、また保護者やCHWsに対するインタビューも並行して行い、ワクチン接種をめぐる地域特有の課題に関してさらなる理解を目指しました。Masantolでは、洪水の影響を受けた地域の生活環境や、地域行政、CHWs、住民の方々が協力しながら保健活動を支えている様子を学ぶことができました。

Week 2:Macabebeでの調査

Week 2は、Week 1の調査地であるMasantolから車で約30分ほど内陸に入ったMacabebeで調査を行いました。MacabebeはSan FernandoやApalitといった大きな街にも比較的近く、ファストフード店やスーパーマーケットも見られる地域です。

Week 1の地域と比べると都市化が進んでおり、人々はより「個」の生活を営んでいるように感じられました。洪水による影響は残っているものの、Week 1の地域で多く見られたような泥に埋もれた建物や、トタンやベニヤ板などで急造された家屋はあまり見られず、地域全体としては従来の生活が比較的維持されている印象を受けました。

Week 2からは、マニラのMAPUA大学に所属する医学部1年生5名が新たに調査チームに加わりました。Week 1に参加した学生とは異なり臨床現場に出た経験がまだ少ないこともあり、初日は少し不安そうな様子もありましたがすぐに調査の流れに慣れ、その後はおおむね滞りなく、住民との対話やデータコレクションを主体的に進めてくれました。

また、Week 2の月曜日は、ちょうど学校が夏休み明けの初日を迎えた日でもありました。前の週とは異なり、子どもたちは朝学校へ行き、昼食の時間になると一度家に戻り、また学校へ行き、夕方に帰宅するという日常が始まりました。大人たちはそれに合わせて働き、子どもたちの送り迎えをしていました。

保護者の方々はそれぞれの生活がある中で、量的調査やインタビューのために時間を割いてくださいました。また、CHWsにも献身的にサポートしていただき、順調に目標数を集めることができました。

Week 2の最終日には、Masantol内にあるSapang Kawayanという集落も訪問しました。Sapang Kawayanは、数年前から洪水により周囲を水に囲まれ、“島”のようになっている地域です。人口約5,000人のこの集落には、小学校・中学校・高校があり、舟運で日々の生活物資を調達しながら、基本的には自立した社会が営まれているように見えました。

子どもたちは元気にバスケットボールを楽しみ、突然訪れた私たちにもにこやかに温かく接してくれました。また、この地域ではパンパンガ州で広く話されるカパンパンガン語ではなく、タガログ語が日常の言語として使われており、Masantolの他地域との文化的な違いを感じる機会にもなりました。

Week 3:Sapangbatoでの調査

Week 3は、Angeles CityのSapangbatoで調査を行いました。前2週のMasantolやMacabebeは、海に近い洪水地帯でしたが、Sapangbatoはそれらとは大きく異なる山がちな地域です。

Sapangbatoは、フィリピン有数の経済特区であるClarkに地理的に近接しています。一見すると都市化が進み、現代的な生活が営まれているように思えます。しかし実際に訪れてみると、Clarkは全体が塀に囲まれており、その内側と外側では人々の生活環境が大きく異なることに驚かされました。

Clarkのすぐ外側に位置するこの地域では、急峻な山の斜面や限られた平坦な土地に家屋が密集しています。人々の移動手段は主に徒歩またはトライク(側車付き小型バイク)に限られ、物を売りに行く時など限られた場合を除き、多くの住民は集落内で日常生活を完結させているように見えました。

この地域の地理的制約は、住民の受療行動にも影響を及ぼしていると感じました。CHWsが勤務し、ワクチン接種を含む健康事業を実施する場であるヘルスセンターまで、数キロの山道を移動しなければ到達できない地域もあります。住民からは、こうしたアクセスの障壁がワクチン接種行動を制限しているという声も聞かれました。

また、インターネットへの接続が限られるこの地域では、情報の伝播や信頼の形成にも特徴が見られました。保護者の方々へのインタビューの中では、地域における社会規範、特に「周囲の人がどう考えているか」「誰が何を勧めているか」といった指示的規範の影響について語られる場面もありました。

さらに、CHWs、地域政府、そしてワクチン接種に携わるコミュニティ外の人々に対する住民の信頼には、コミュニティ内でも違いがあることが示唆されました。例えば、ワクチンを携えて外部から訪れる人々に対して、CHWsの帯同があるかどうかによって、住民の受け止め方が異なる可能性も感じられました。

一方で、地域の方々は、大人も子どもも、外から来た私たちに対して非常に好意的に接してくださいました。これは、CHWsに同行していただきながらコミュニティを訪問し、コミュニティリーダーや住民一人ひとりに調査の内容や背景を丁寧に説明したこと、私たちの調査が介入研究ではなく観察研究であること、現地医学生がタガログ語で丁寧にラポールを形成してくれたこと、そして住民の方々一人ひとりの協力を惜しまない温かさによるところが大きいと感じます。

3週間を通じて見えたこと

Week 1からWeek 3までの調査を通じて、ワクチン接種をめぐる課題は、単に「情報があるかないか」だけでは説明できないことを改めて学びました。

Masantolでは、洪水の影響を受けた生活環境の中で、地域行政やCHWsが住民と近い距離で保健活動を支えていました。Macabebeでは、より都市化が進んだ地域において、学校や仕事、家庭生活といった日常のリズムの中で、保護者が調査に協力してくださいました。Sapangbatoでは、山がちな地形や限られた移動手段、インターネット接続の制約が、ワクチン接種へのアクセスや情報の伝わり方に影響していることを感じました。

また、どの地域においても、CHWsやBarangay関係者の存在は非常に大きく、住民との信頼関係を築く上で欠かせない役割を果たしていました。地域の言語で丁寧に説明し、住民の生活に敬意を払いながら調査を行うことの重要性も、現地医学生との協働を通じて強く実感しました。

ワクチン接種へのアクセスを改善するためには、単にサービスを提供するだけでなく、地理的条件、生活環境、社会規範、情報環境、そして地域の信頼関係を理解することが不可欠です。3週間の現地調査は、ゼロドース児童や未接種者へのアプローチを考える上で、地域ごとの文脈に寄り添うことの重要性を改めて教えてくれる機会となりました。

調査にご協力くださった地域住民の皆さま、CHWs、Barangay関係者、現地医学生、そして関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます。

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